「リノベーションとくらしかた」をテーマに 「JKKハウジング大学校シンポジウム」を開催

2017年11月27日

株式会社住環境研究所

積水化学工業株式会社 住宅カンパニー(プレジデント:関口俊一)の調査研究機関である株式会社住環境研究所(所長:小池裕人、所在地:東京都千代田区)は、1975年設立以来40年余り、生活者の視点をベースとした住宅と住環境に関する調査と研究を主業とし、それら調査に基づいた情報を発信して参りました。また、1995年には大学の研究者を講師に招き、住環境を様々な視点から捉える講義を通じ若手社員を教育するという目的で「JKKハウジング大学校」を開設し今年で23年目を迎えました。

この度、昨年に引き続き、11月24日(金)に『JKKハウジング大学校シンポジウム』を開催しましたのでお知らせします。
今回のテーマは「リノベーションとくらしかた」。「ホシノタニ」のリノベーションで2016年グッドデザイン金賞を受賞した、“日本のリノベーションの第一人者”である、(株)ブルースタジオ クリエイティブディレクターの大島芳彦氏による基調講演「リノベーションによる地域価値の再生 ~人が主役の小さなまちづくり~」をはじめ、大島氏とハウジング大学校講師によるパネルディスカッションも行いました。会場には約100人が出席しました。

「JKKハウジング大学校シンポジウム」概要

開催日時:11月24日(金) 13:00-16:20
開催場所:学士会館 210号室 (東京都千代田区神田錦町3‐28)
基調講演テーマ:「リノベーションによる地域価値の再生~人が主役の小さなまちづくり~」
    講演者:(株)ブルースタジオ クリエイティブディレクター 大島芳彦氏
パネルディスカッション
  パネリスト:大島芳彦 (株)ブルースタジオ クリエイティブディレクター 
        松村秀一 東京大学大学院教授
        菊池成朋 九州大学教授
        鈴木 毅 近畿大学教授
        伊藤裕久 東京理科大学教授
        大原一興 横浜国立大学大学院教授
        清家 剛    東京大学大学院准教授

 


■大島芳彦氏基調講演「リノベーションによる地域価値の再生~人が主役の小さなまちづくり~」

【大島芳彦氏のプロフィール】

株式会社ブルースタジオ クリエイティブディレクター 専務取締役 
1970年東京都生まれ。大手組織設計事務所勤務を経て、2000年ブルースタジオにて遊休不動産の再生流通活性化をテーマとした「リノベーション」事業を起業。その活動域は建築設計にとどまらず、不動産商品企画、コンサルティング、グラフィックデザイン、プロパティマネジメントなど多岐にわたる。実需、事業用を問わず単体不動産の再生を手がける一方で、団地再生、地域再生など都市スケールの再生プロジェクトを自治体とともに取り組む。
近年では 全国で展開する地域再生ワークショップ「リノベーションスクール」の実績により2015年日本建築学会教育賞受賞。団地再生プロジェクト「ホシノタニ団地」で2016年度グッドデザイン金賞(経産大臣賞)を受賞。 
(一般社団法人)リノベーション住宅推進協議会理事 副会長。(一般社団法人)HEAD研究会理事。
(株)リノベリング取締役。大阪工業大学建築学科客員教授。東京理科大学建築学科非常勤講師。

【講演要旨】

敷地に価値なし、エリアに価値あり-現代社会において不動産価値の本質はすでに建物や敷地単体には存在せず、その不動産が所在するエリアそのものに存在する。すなわちハードウェアよりもソフトウェア、つまり周辺エリアのアクティビティー、生活者同士のコミュニケーションの質を評価すべき時代になろうとしています。
かつてのまちづくりとは「公」が主導する「大きなまちづくり」でした。人口増加、経済成長時代の公金、補助金を財源とするハコモノのまちづくりは、人口減少、少子高齢の今、立ち行かなくなることが明白になろうとしています。これまでの大きなまちづくりは日本中の街を均質化し、ほぼ全ての市民に近代的かつ機能的豊かさを与えました。しかし街の評価軸が画一化したことによって、結果「選ばれるまち」と「選ばれないまち」の差が明確になりました。昨今の「地方創成」とはこの選ばれない街を再び選ばれるまちにするための行動に他なりません。
いまふたたび選ばれるまちを取り戻すためのコツ。それは「公」主導から「民」主導の「小さなまちづくり」に転換することです。不動産賃貸業をふくめ市民が営む地域に根付いたビジネスは一つ一つが地域を変えるきっかけとなります。ただし各々の事業者が事業そのものに対して地域に対する波及効果を意識し、まちづくりの当事者としてパブリックマインドをもってこれに取り組まなければまちは変わりません。
事業者はエリアに対する近未来のビジョンをもち、これに共感する人々の環を拡げ地域に対する当事者を増やすイメージをもつのです。例えば賃貸住宅においては入居者を「消費者」にせずまちの「当事者」として育てるイメージをもつのです。一件の賃貸住宅といえどもエリアのビジョンを持つべきなのです。

 
JKKハウジング大学校シンポジウム(大島氏講演時)風景